* * I’m gonna hold you ’til your hurt is gone. * -   * * - ndex
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奥州の冬は寒い。


城の中だと言うのに吐く息は白く、水は氷のように冷たい。


夜になるとその寒さは更に増し


普段は活発なこの城の主も大人しくなる。


そして、彼が暑さにも寒さにも弱い事は周知の事実だったりする。



― Love yearns ―




「もう一回元親んトコにでも行くかなぁ」


「えぇ是非そうしてください伊達殿」


「つれねーな」


「当たり前です!!もう、元親様になんと言えば良いのやら…!」


「Ha Ha!!アイツには俺から話つけてやるよ」


「伊達殿は信用できませんッ」


「言うねぇ、アンタ」


に睨まれて、政宗はまた楽しそうに笑った。







事の始まりは1ヶ月前、


政宗が寒さしのぎに元親の城に遊びに出かけた時だった。




「Oh〜すっげぇ美女が居るぜ」


「ああ、可愛いだろ。って言うんだぜ」


「へぇ…」


「気に入ったか?」


「ああウチには居ねぇタイプだな」


「やらねーからな。俺のお気に入りなんだよ、は」


「じゃ、ここに居る間だけ仲良くさせてもらおうかな」



あの時、元親様に頼まれたから仕方なくと思って


伊達殿達のお世話をしたのがいけなかったのだ。


ちょっと良い人かもしれない、と思って仲良くしたから。



、また来るからな」


「えぇ、お待ちしておりますわ」


私の社交事例に涼しげな笑顔を見せた伊達殿を


私は「良い人」と思って居たと言うのに…。









「折角奥州まで来たんだ、ゆっくりしてけよ」


「帰らせて下さい」


「まーまー。夜も遅いんだ、明日でも良いだろ?」




ほら、と言って差し出された杯を受け取って


「飲めよ」と言う政宗に訝しげな目を向けると、


彼は軽く肩を竦めて自らが酒を飲む事で


自分が何も考えていない事を知らせた。



「俺は本気なんだぜ、My honey…」


「だからって誘拐は無いんじゃないですか?」


「しょーがねぇだろ。逢いたかったんだからよ」


「……伊達殿は少し元親様に似ておられますね」


「Are you kidding?全然似てねぇよ」


「そういう所が似ているのですよ」




ふふ、と笑っては杯を口に運ぶ。


と、口の中に広がる甘みに驚き、政宗を見た。




「甘酒ですか…?」


「あぁ、強い酒は嫌いかもしれねぇと思ってな」


「あ……。お気遣い、ありがとうございます」


「OK、OK、気にすんな。勝手に攫ってきたんだしな」


「そうでしたね」


「忘れてたのかよ」


「お恥ずかしながら、伊達殿がお優しいからつい…」


「…やっぱアンタ可愛いねぇ。Cuteだ。酌頼んでも良いか?」


「えぇ」




軽く言葉を交しながら酌をしていると


外が急に騒がしくなった。


火鉢がパチッと音を立てる。





「曲者だ―――!!!」





慌しく城の中を走り回る足音には驚きを隠せないまま


隣の政宗に視線を向けると、彼は「来やがったか…」と呟き


口元に薄く笑みを浮かべていた。




「ちょっと待ってろ」


「え、えぇ…」




襖が開くと同時に冬の身を裂くような冷たい風が


一気に部屋の中へ入ってきて身震いする。


は着物の前をしっかりと握り締め、寒空の下で


茶色の髪を揺らしている政宗から目を離せないでいた。


理由はわからないけれど。





「よ―元親!よく来たなぁ!って聞こえる訳ねぇか。小十郎!」


「はい」


「元親呼んで来てくんねぇか?」


「ですが…」


「Shit!アイツは何もしねぇさ」


「その確証は?」




にやりと笑って政宗は小十郎を見たまま親指で部屋の中を指差した。


促されるままに部屋の中を除きこむと、彼はそのまま化石の様に固まってしまった。







「な?」


「あ、あああ貴方なにしてんですかァァァ!!!!」















「どうもすみませんでした、うちの殿が…」


「ったくよー…首に縄でもかけとけ!」


「すみません…」


「Ha!盗られる奴がわりぃんだよ」


「政宗様!!一体誰の所為でこんな事になったと思っているのですか!! 大体殿はいつも勝手過ぎます!!」


「わーるかったって!Sorry、Sorry」




全く反省の色が見られない政宗の態度に小十郎は


怒りを吐き出すかのように長く、深い息を吐いた。




「あの、でも…楽しかったです」


「俺もだぜ、My honey」


「は!?てめぇ等一体何してたんだよ!」


「あま…」


「あまーい一時を過ごしてたんだよ」


「何ィ!?テメッ…どーゆー事だ!!」


「Sweet time」


「益々わかんねーよ」


「Secret、秘密なんだよ。な、?」


「え、えぇ…」




にこ、と笑ったの横で元親が「意味わかんねぇ」と顔を顰めていた。


その向かい側では、満足気な政宗と疲れた顔をした小十郎。


その小十郎がふ、と笑って口を開いた。




「もう夜も遅いですし、泊まっていかれますか?うちの殿の所為でお疲れでしょうし」


「オイ」


「あーどうするよ?」


「私は構いませんよ」


「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうぜ」


「お供の方はいかがなさいますか?」


「あ?お供?いねぇよそんな奴」


「は!?」




目を丸くして言葉を失う小十郎の横で政宗が豪快に笑った。


軽く眩暈を感じる小十郎を他所に政宗はどんどん話を進めて行く。




「よし!Partyの始まりだ!」


「静かにやってくださいね。私は他の者に事情を説明してきますので。


今度ばかりは私もフォローしかねますからね?政宗様」


「お、おう」




小十郎が去った後、しばらくして侍女がと元親を別々の部屋に案内した。


程なくして2人は再び政宗の自室に戻って来たが。


宴は「静かに」と釘をさされたにも関わらず盛り上がり、朝まで続いた。













「政宗様、もう昼になりますが…」


小十郎は襖の前で暫し返事を待ち、眉を潜める。


何時もならすぐに帰ってくるはずの返事が返って来ない。


あんな事があっただけに嫌な予感ばかりが胸に過る。


「開けますよ」


言うが早いか開けるが先か。


襖を開けた瞬間、少し緊張の見えていた顔に穏やかな笑みが宿った。


「まるで子供ですね…」


を真ん中にして寄り添うように寝ている3人が


まるで子供の様に見えて、小十郎はクスクス笑いながら襖を閉めた。


しばらくの間は誰も政宗の部屋に近寄らせぬよう指示を出し、


彼は先ほどの光景を思い出して再びクスクスと笑った。


珍しい事もあるのだと。




「明日は雹が振るかもしれませんね…」




青く晴れ渡った空を仰いで、可笑しそうにそう呟いた。









終。





モドル