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Life is not worth living without you.
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ndex
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「すいません牧さん。それ取って貰えますか?」
「ん?これか?」
「それじゃなくて、その横のです」
「これか?」
「牧さん、多分これっすよコレ!これ神さんのタオルですよね!」
「あーうん。そうなんだけどソレじゃなくて・・・」
「?これか?」
「これじゃないっすか?・・ってコレ俺のだ!うわ、何でこんな所に!?」
「もー誰か部室片付けろよ・・・」
― THE★大掃除 〜海南編〜 ―
「よーし!!じゃあ気合入れて掃除するぞー!!」
「めんどくせぇー」
「ノブはとりあえず私物を片付ける事!ほら!ダラダラしないの!!」
「はーいはい…」
窓際のベンチの上に積み上げられた私物の山にノブを追い払って、
私は牧と神くんにホウキを渡した。
武藤と高砂には、用務室から掃除道具を借りてきてもらうように頼んだ。
「勿論、マイ○ットも忘れずにね」
「おう」
行ってくらー、と言って仲良さそうに部室を出て行く後姿を見送ると、
神くんが急に私の方を振り向いた。
「もしかして隅々まで掃除するつもりですか?かなり広いですよ」
「勿論!ピカッピカにすれば誰も汚せなくなるでしょ?」
「どうかなぁ…」
「さー!頑張ろう!」
土曜日の練習を午前中で切り上げて、皆で部室の掃除をする事になった。
余りの汚さに部長である牧が限界を感じたからだ。
どうしてこうなるまで放置していたのかと思うと、我ながら泣きたくなる。
って言っても私は普段ココにはあんまり出入りしないから
ぽわんとしてこの惨状を見逃していた牧が悪いんだけどね。
「うっわ!この靴下誰の!?」
ベンチの下にホウキを突っ込んで、は埃まみれの靴下を掃き出した。
白い靴下が灰色の綿埃にまみれて、いかにも異臭を放ってそうな感じだ。
「あ、ソレ多分俺のッス!」
「またお前かノブ!!」
「す、すみません!」
怒りに任せて靴下をノブに投げつけるも、靴下は私の手を離れて数センチの所に落下した。
謝りながらソレを拾うノブを見下ろしていると後ろから溜息が聞こえた。
「コレだけあると、どれを捨てればいいか解らないな…」
「牧が必要ないと思ったものは捨てればイイんだよ。
置きっぱなしにしてるような物なんだから、大切なものはないはずだし」
「それもそうだな」
そう言うと、牧は素早く誰のものとも解らぬ私物を手にとってはどんどんゴミ袋に入れていった。
汚いTシャツも、必要だと判断したものはきちんと畳んで
ベンチの端に綺麗に並べているあたり、牧らしいというかなんというか。
「あ」
「どうしたの?神くん」
「今黒いのが横切ったような…」
本当に小さい独り言だったのに、神くんのその言葉で室内が一瞬にしてシンとなった。
それはもしかしてお決まりの黒光りした素早くて図太い生命力の……
「ナターシャかな」
「や、やだ!!勘弁してよホントに――!!」
「信長、ソコらへんに殺虫剤ない?」
「えっ、あ…ないです」
「ないの!?ど、どうしよう…」
「叩き潰すしかないですよね」
「えぇ!?ムリだよ!」
「あ、そんな所に避難しなくても大丈夫ですよ、さん。ナターシャはこの隙間にいるので」
近くにあった雑誌を手に持って神くんは壁際にしゃがみ込んだ。
ほんとに叩き潰すつもりだ、この人…。
「あれ?何やってんだ、神」
「あ、武藤さん。今ナターシャが出たんですよ」
「ナターシャ?」
「ゴキっすよ、ゴキ!」
「あぁぁあ―――!!その名前を言うなバカッ!」
「おおお落ちついて下さいさんっ!!」
落ちつけと言われても、この部屋にアイツが居るのかと思うと
落ちつけませんて、ホント!!
「おーい。掃除機借りてきたぞー」
業務用のデッカイ掃除機を引きずりながら高砂が部室に入ってきた。
現代科学における大発明の掃除機……………掃除機?
「高砂!!それ貸して!!」
「は!?」
「いいから早く!」
自分でも驚くくらいの早さで掃除機をスタンバイさせ、ブラシ部分を取った。
そして、その先を神くんが監視している例の隙間に差しこんだ。
「もしかして、吸うのか?」
「そう!ナイスアイディアだと思うんだけど。…神くん!!」
「はい?」
「一緒にナターシャ葬って!!」
真剣な顔でノズルを手渡すと、可笑しそうに笑いながら神くんは快く引き受けてくれた。
「じゃあ…いくよ?」
「はい」
ノブの「頑張ってくださーい」と言う声援を聞きながら、掃除機のスイッチを入れた。
「す、吸ったかな…?」
「さぁ…どうなんですかね」
「止めてみる?」
「そうで…」
ズゴゴゴゴ!!!
「ひぃィィ!!」
色々な物が引き千切れたような音がした。
間違えてヘアピンを掃除機で吸っちゃった時ですらこんな音はしない。
神くんはかなり引き攣ったような顔をしている。私も絶対引き攣ってる。
ノズルを持つ手にも確かに大きな振動が伝わってきて、
その振動が収まりきるまでの数秒間は本当に悪夢だった。
絶対一生忘れない…。
「き、切りますよ」
振動と音が収まって数秒後。神くんが掃除機のスイッチを切った。
「だぁぁぁ!!!気持ち悪い!!なんか直に触っちゃった気分!!」
「大丈夫ですか?」
「と、とりあえずは…。あれ?ノブ、何してるの?」
「トドメっす!」
プシュー、と掃除機のノズルを取って、そこにデオトラントスプレーをかけるノブ。
「だって、アイツこの中で跳ねまわってるかもしれないじゃないッスか」
そう言ってノブはひたすら掃除機の中にデオトラントスプレーを吹きつけた。
ガタガタしている私と、疲れた顔をした神くん、そしてしゃがみ込んで
ひたすら掃除機の中にスプレーを吹きつけるノブ。
この普通じゃない光景をみて牧が一言呟いた。
「ゴキブリじゃなくて良かった…」
End
この後は順調に片付けしました。
私はゴキをナターシャと呼びます。その方が可愛いですよね。
ナターシャほど人間に嫌われている生物って居ないと思います……。笑。
モドル