* * Life is not worth living without you. * -   * * - ndex
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小さい頃はあたしよりも遥かに小さくて、


ノブちゃん、なんて呼ばれていたアイツも


数年ぶりに顔を合わせたら「ちゃん」付けが似合わない位


デカくて逞しい男の子になっていた。




― 新年 ―




「ノブちゃんレギュラーになったんですってねー。頑張ってるわねぇ、本当」


「いやー実力ッスよ!じ・つ・りょ・く!!かっかっか!!」






親戚一同が集まる1月のある日、あたしはお母さんの手伝いをしながら


おばさんとアイツの会話を聞いていた。


ノブちゃん??


絶対オカシイって、その呼び方。






「あら!?随分大きいのねぇー何センチあるの?」


「178くらい」






ジュースを取りに立ちあがった所をまたおばちゃんに捕まって


ノブちゃん……もとい信長はちょっとメンド臭そうにそう答えた。


まぁ、メンド臭くなる気持ちも解るけどね。


今日で3回目くらいだもん、その質問。






「おばちゃん!カルピス取って!」


、カルピス取ってだってよ」


「はいはい。…ハイどーぞ」


「サンキュー」






もともと残りが少なかったカルピスだったから


信長が飲んだ分で最後となった。


子供が飲める飲み物もコレで最後。






「お母さん、他に飲み物ないの?全部無くなっちゃった。あたしまだ一口も飲んでないのに」


「あ、わりィ」


「一人で2本も飲むかなー?普通」






またなんか訳解らない事を言って信長はデカイ声で笑った。


あたしはそのノリが解らなくてちょっと困った。


こんなに久しぶりに会うと、遠慮なんて要らないと解っていても、どうも壁を感じてしまう。


そしたらお母さんが


「2人でコンビニ行って、ジュースでも買ってきなさい」


って言って素早くあたしの手に千円札を握らせた。


2人でって言われても困るんだけど。






「よし!じゃあ食った分運動すっかなー」


「え、行くの?」


「いかねぇの?」


「寒いしめんどくさい。一人で行って来て…」


「俺道わかんねーもん。ほら、良いから行くぞ!」






強制連行されるあたしを、お母さん達は残酷なほど温かい目で見送ってくれた。








「うぉ!つめてッ」


「どうしたの?」


「靴ん中に雪入った!くそー代えの靴下ねーのに」






片手にコンビニの袋をぶら下げて信長が嫌そうな顔をして立ち止まった。


いくらつま先を地面に叩きつけても全然意味無いと思うんだけど。






「お父さんの靴下でよければ貸すよ?」


「やだよ。おじさん水虫じゃん」


「あはははは!覚えてたか!」


「ったりめーだ!俺の記憶力をナメるでない」


「何言ってるの。昔はほんっと記憶力無かったじゃん!…えーと……」






ノブちゃん。


その響きにとても違和感があって、中々呼べないでいると顔を顰められた。


普通に信長とでも呼べば良いんだけど、それもなんか変な気がするし…。






「オイ、俺の名前忘れたとか言うんじゃねーだろーな、オメー」


「そんな事無いよー。信長でしょ」


「じゃあなんだよ今の間は」


「ねぇ、何時も学校でなんて呼ばれてるの?」


「あ?」


「だから、あだ名とかあるでしょ」






そうだなー…。とか言って、次々と自分のあだ名を列挙していく。


天才、とかはまず嘘だと思うけど。


でも、これだけあだ名があるとどれで呼ぶか迷うなぁ…。






「沢山あるねー」


「まぁな!それだけ友達が多いって事だ!」


「うん、なんか友達多そうだもんね」


「クラスメイトはみんな親友だからな!」


「はは!面白いなーホント!!じゃあこれからはノブって呼びますので。よろしくね」


「おう」






家に着くまでの間、お互いの学校生活について色々話をした。


ノブには尊敬する先輩が何人かいるらしく、部活も楽しいみたいで少し羨ましい。


数年ぶりに会ったとは思わないくらい遠慮なく喋り捲るノブと話しをしていたら


あたしも自然と始めに会った時のような壁を感じなくなっていった。





モドル