* * I’m gonna hold you ’til your hurt is gone. * -   * * - ndex
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「幸村はあったかいねぇ〜」


「そうか?」


「佐助は冷たい」


「よく手が冷たい人は心が温かいって言うだろ?」


「佐助、それは俺が…」


「違うって!別に旦那が冷たいとか言ってるんじゃなくて…」






ちょっと寒い季節の変わり目の昼休み、


3人手を繋いで寝転がった。


視界に入ってくるのは、元気の無い青空と屋上のフェンス。






― お昼寝 ―





「寒い…」


「だから手繋いでんでしょ」


「…ソコだけ温かいかな」


「そこだけでござるか…」


「なんか幸村の手って子供みたいだよね」






うわ、スッゴイ顔…怒ったかな?


って言うより傷付いた?






「ごめん」


「いや、別に」






ならなんで顔を背けるのよ。


正直すぎるんだよね、幸村は。


だからそっと繋いだ手を解いて、後ろの尻尾みたいな髪を掴んだ。






「?」


「いいな〜この髪質。柔らかいし、サラサラ」


「サラサラ??」






自分の髪を掴んでその感触を確かめる幸村。


そんな姿が可愛くて思わず笑ってしまう。






「もっとちゃんと手入れしたらシャンプーのCM出れるかもよ?」


「CMって…あんまり嬉しく無いような」


「アジアが認める髪へ!なんちゃって〜」


「それはちょっと誉めすぎでござるよ!」


「そんな事無いよ!だって本当に綺麗だもん!ほんとだよ?!」


「って、ちょっとお嬢さん!さっきから俺の事忘れて無い?」


「あっ、忘れてた」


「酷ッ!」






もういいよ、なんて言ってゴロンと私に背を向けた。


…けど、手は離してくれないから私も強制的に動かされる。


コンクリートって結構ゴツゴツしてて擦ると痛いんだよ。


何しろスカートだしね。






「佐助、痛い」


「え、痛かった?」


「ん、若干」


「ごめん」


「大丈夫、気にしないで」







なんか佐助に謝られると、あたしが悪い事したみたいな気分になっちゃうなぁ。







「お昼寝しようか?」


「そーだね」


「しかしあと残り何分だ?」


「そーゆー事は気にしないのね、旦那」


「しかし…」


「幸村、どーせ次自習だよ。信玄先生の授業も今日は無いし。だから寝よう?」


「そうそう。偶には休憩も大事、ってね」


「ね?」






しばらく渋い顔をしていた幸村も、私と佐助が色々言う内に


ついに「わかった」って言って目を閉じた。


それを見て、私は佐助と目を合わせて密かに笑った。






「おやすみなさーい」


















それから数時間が経って、空が赤みを帯びてきた頃


屋上の扉を蹴破るようにして二人のデカイ男達が入ってきた。






「ンだぁ?」


「……オイオイ、仲良くおねんねとは良い度胸してんじゃねぇか」







手なんて繋いだりしてよ。


至極面白く無さそうに政宗が言う。






「オイ佐助、テメェは起きてんだろ?」


「……流石は旦那」







目を開けると、腕を組んで仁王立ちしている政宗が目に飛び込んできて


流石の佐助も苦笑して繋いでいた手を離した。







「……って言うか何してんの、あの人」


「ア?俺か?起こしてやんだよ」







幸村の横で煙草に火をつける元親を不信そうな目で見つめる佐助。


その一挙一動を見る目は鋭い。







「だーいじょうぶ!根性焼き入れたりしねぇから」







静かに笑いながらそう言うと、


元親はスーッと煙草の煙を吸いこんで一瞬息を止めた。


そして一気に幸村の顔面目掛けて吐き出した。







「っッ!!!げほっ!!」


「よーぉ。どーだ、目覚めた感想は」







咽ながら煙を払い退ける幸村はうっすら涙目。


元親は嬉しそうにソレを見ている。


もしこれ(旦那)が俺なら煙草なんかじゃなくて確実に踏まれてただろうな…。


伊達の旦那辺りに思いっきり。


ああもう考えただけでイヤだね!







「な、何をする!!!!」


「テメー等が美味しい事してっからだ」


「なに…?どうしたの?」


「お!やーっと起きやがったか!」


「あ、あれ!?チッカ先輩!?政宗先輩!?ってゆーかどーして幸村泣いてるの!?」


「泣いて無いでござる!!」


「あ、あれ…?ていうか、もう夕方?」







眠りについたときよりも幾分か雲が多くなった空を見上げて


ボケーッとしていると、後ろから確かな重みと温かさ。


そして囁くようなイヤらしい声が乗ってきた。







「どうしたんですか?政宗先輩…」


「それがな、俺ケッコー独占欲強いみたいなんだわ」


「…?」


「なぁ今度は俺と寝ねぇ?別に何もしねぇからさ」







お断りします。


そう言おうと思って髪を撫でてくる手を払おうとした時。


ちゅっ、と耳元で音がして、柔らかく温かい感触を感じた。







「!!」


「ま、そんなに言うなら次にしといてやるぜ」







政宗の行為を誰も咎めないのは、


幸村と元親がさっきの事で言い争っていて、


佐助はソレの仲裁に入るので忙しかったからで。


何事も無かったかのように去って行く後姿をはただ黙って見送った。







「チカ、帰るぞ」


「あ、オイ待てよ!!」


「お前等もさっさと帰れよ」







じゃ、と片手を挙げて政宗は元親を待たずに屋上の扉を閉めた。


そのすぐ後に元親も続いて出て行く。







「俺達もそろそろ帰ろうか」


「……、どうした?」


「…あ、ううん!なんでもない!」


「顔が赤い気がするのでござるが…」


「気のせい気のせい!!さ、早く帰ろう」


「ああ…」







腑に落ちなさそうな幸村を引っ張って、


ドキドキしっぱなしの心を隠す為、弾むように歩き出す。


もう…ほんと、バカじゃないの、あの人…。







 



モドル