* *  Over the sidewalks Running away from the streets we knew . * -   * * - ndex
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「刹那―!おッはよー!」

「ッ、ティエリア!!」

「何よー!逃げなくたって良いじゃない!」





ティエリアの後ろに逃げ込んでネーナを交した刹那は回りにばれないようにそっと息を吐いた。

ココの所なぜか毎日こんな目にあっている気がする。

一人でいたいというのは贅沢な望みなのだろうか。






「ネーナ〜!」

「げー、ミハ兄じゃーん」

「げーとは何だ!」

「ヨハ兄だったら良かったのにー」

「ネーナが最近俺に冷たいのは何故だろう…」

「一言で言えばウザイからだろうな」

「テメェには聞いてねぇんだよ!この眼鏡野郎が!」

「その台詞も聞き飽きたな。低脳にも程があるとは思わないか?」

「思わないね!!」

「ああそうか。気づけないから低脳なのだな」

「くあぁ〜〜!!こいつ超ムカつく!マジでむかつく!切り刻んでやりてぇ!」






頭を抱えて地団駄踏むミハエルをさらにティエリアが追い討ちをかける様に嘲笑う。

ネーナは既にミハエルへの興味を失っていて、

今の関心ごとは日直が黒板に書いている文字へと移っていた。

書き手が邪魔でまだ文字の全体は見えない。






「刹那いるか?」

「ロックオン、どうした」

「こいつなんだが…うっかり間違えちまったみたいで」






申し訳なさそうに笑いながらロックオンは刹那に数学の教科書を差し出した。

…確かに3年の教科書も1年の教科書も同じ色だが厚さが違うだろう。

呆れてものも言えないというのはこの事を言うのか。と刹那は思う。






「いや・・・今日は数学、ないから」

「…じゃあ俺が責任もってお持ち帰りします」

「いっそそのまま使ってしまえば良いのに」

「いや、それはねーよ」

「伝説になるぞ」

「そんな伝説いりません」

「遠慮するな」

「してねぇー!」






少しいじけ気味のロックオンの背中を無言で見送って

未だにティエリアと勝ち目のない口喧嘩をしているミハエルの横を通り過ぎる。

自分の席に座ろうと椅子に手を伸ばしたその時。






「ねぇねぇ!数学の教科書って持ってきた?」

「は?」

「やだ、黒板に書いてあるじゃん。1時間目は数学になるんだってよ」







ほんとうだ。

数学といえば、あのドS嬢の授業だ。教科書忘れは非常に悪い。

あのネーナですら困っているくらいだ。非常によろしくない。






「・・・ロックオンに会いに行ってくる」

「マジ?じゃああたしも行くー!ヨハ兄に会いにね♪」

「え、ちょ・・・ネーナ!俺は!?」

「刹那〜待ってよ!」

「つ、ついて来るな!!ティエリア!」

「俺は召喚獣か?ポケモンの様に呼ぶな」

「誰も君に決めた!とか言ってないから!」

「召喚獣ならエデンの方がいいな。いやヴァリガルマンダも捨てがたい!アレは物語の上で非常に重要な役割を」

「いいから早く行くぞ」







3年の教室付近は無駄に威圧感があって、

1年生は中々近寄れないというのが例年通りの慣習のはずなのだが、

刹那、ティエリア、ネーナは何の迷いもなく廊下の真ん中を堂々と歩いて3年1組の扉を開けた。

教室中の奇異の視線など諸共せずに。






「ヨハ兄〜きちゃったー」

「ネーナ!?」

「…ロックオン」

「お、刹那!どうした?しかもティエリアも一緒なんて珍しいな」

「刹那に強制召喚されただけだ」

「ん?そうなのか」

「あまり気にしなくていい。それより数学…」






急な時間割変更のことを伝えると何故かロックオンは少し嬉しげに笑った。

自分のミスが逆に刹那の役に立った事が面白かったらしい。






「まあ、結果オーライって所か!今度から気をつけろよ」

「あんたが言うな」

「はは、確かにな。今回は人の事いえないな」

「そうだ。次やったらあのハロ修理に出すからな」

「それだけは勘弁してください」

「刹那・F・セイエイ、そろそろ時間だ」

「ああ。じゃあまた」

「おい刹那、あの子はいいのか?」

「気にしなくていい、本当に」






なんで自分がこんなに急がないといけないのかと思いながら逃げるように教室を出た。








「刹那」

「なんだ?」

「部活はやらないのか?」






放課後珍しくティエリアに呼び止められた。

しかも何かと思えば部活だなんて珍しい。






「写真部は部員不足なのか?」

「そういう訳ではない」

「どっちにしても俺には多分、写真は向いてない」

「そんなことは分かりきっている」

「なら…」

「部活動は原則参加の決まりだからな。忘れているのではないかと少し気になっただけだ」

「問題ない。ギリギリまで参加しないだけだ」

「それならば良い」






何かと問題だらけの会話をして、別れる。

さよならの挨拶をした所でどうせ同じ部屋に帰るのだから

別れを惜しむでもなくあっさりと別れた。



 
モドル