* * I’m gonna hold you ’til your hurt is gone. * -   * * - ndex
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目を開けると、見慣れない木の天井があって


ふと、顔を横に動かすと我が家にはない障子があった。


えーと…ここは何処だろ…?


とりあえず携帯……




― 立場 ―





「Good morning」


「ぅひゃぁぁあ!!!!」






この間の伊達政宗みたいな人じゃん!!


い、何時から居たんだろ……。


って言うかアレは私の携帯!!






「なッ……何してんですか?」


「暇潰し。いい玩具を見つけたんでな」






ストラップを摘まんで奴は私の鼻先でブラブラと携帯を揺らした。


取り返そうと手を伸ばすと、絶妙なタイミングでソレは私の前から姿を消した。






「返して下さい!」


「No」


「ノーじゃなくて…って、メールとか見てないですよね!?」


「めーる…?」


「え…?知らない…?もしかしてココってとんでもない秘境なんじゃ…」


「ほーぉ・・・。良い度胸だ」


「いだッ!痛い痛い…いひゃい!!」






顎っ……顎割れる!!!


何この尋常じゃない力!!!!


ほんとマジ、早く離して…!!





「ご、ごめ…」


「殿!!何をなさっているのですか!?」


「おう、どうした小十郎」


「どうしたって……大丈夫ですか?」


「な、なんとか……」






私は顎を擦りながら、心配そうに様子を伺ってくれる小十郎さんに


安心させる意味を込めて、いっぱいいっぱいの笑顔を向けた。





「あっ……アンタ!!顎割れる所だったでしょ!!?


ケツアゴになったらどーしてくれんのよ!?」


「そん時はそん時だろ」


「無 責 任 !!!」


「まぁまぁ、落ちついて下さい、さん」


「………え?どうして私の名前知ってるんですか?」






そういえば、ここって何処だろう。


今更だけどこの人たちは誰?


昨日の事と、この眼帯の男が政宗サマって呼ばれてるあたりで


なんとなーく予想はつく気がするけど…。


いやでもまさか……ねぇ?






「貴方の荷物を調べさせてもらいました」


「はぁ…」






調べるって言っても、財布と携帯と、


ゲーセンとバーゲンの戦利品しかないと思ったけど。


そこからどうやって調べたんだろ…






「これは凄くそっくりな絵ですね。驚きました」


「あぁー免許書か!」






ス、と布団の上に置かれた免許書を見て思わず納得してしまった。


これ見たら名前とか全部解るもんねぇ…。


まぁ……このモロ犯罪者顔の写真にそっくりって言われた事には少し傷ついたけど。






「どなたが描かれた物なのですか?」


「えっとー……」






描かれた…描かれたって何?


普通に写真なんだけどな…。






「改めて聞く。お前の名前は?」


「…です。貴方は?」






腕組みをして、凄く偉そうなこのヒトに


問い返すと、少しばかり良い気分になった。






「奥州筆頭、伊達政宗」


「……………へぇ」


「なんだその薄い反応は」


「ごめんなさい!!」






政宗がほんの少し身体を前に動かしたのを見て


反射的に身を引き、勢い良く謝罪の言葉が飛び出した。


心なしか顎の痛みがぶり返してきた気がする。






「私は片倉小十郎です。以後お見知りお気を」


「あ、はい…。よろしくお願いします」






伊達政宗に片倉小十郎かぁ〜。


片倉小十郎って、一国一城令のあの人だよね?


って事は……まさか、まさかとは思ったけど


ココ、戦国時代か…。


我ながら、冷静な自分にビックリだわ。






「伊達政宗って事は……400年くらい前って事かな…?」


「は?」


「What?」


「あ――………なんか私、タイムスリップしたみたいです」


「たいむ…?」


「何ワケわかんねぇ事ぬかしてやがる」


「えーと…私にもまだよく解ってなくて…。すいません」






タイムスリップ……。


なんだか私、漫画の話でもしてるみたい。


でも、さっきの顎の痛みはリアルだったしな――…・・。






「やっぱ現実、かぁ…。どうやって帰れば良いんだろ…」


「……お前、自分の立場っーモンを解ってねぇんだな」


「立場?何、立場って。お客さんって事?」






視線を、そっと目を伏せた小十郎さんから政宗サンに移す。







「お前は戦利品なんだよ」


「戦利品ってそんな…人を物みたいに…」


「まぁ、そういう訳だ。行くぞ小十郎」


「はい」


「あ、ちょっ…!」


「これ借りてくぜ」


「え!携帯……!」






軽く頭を下げて、小十郎さんが障子を閉めた。


パタン、と無機質な音が部屋によく響いた。






「戦利品……かぁ」






それはつまり、自由がきかないって事だよね…。


どうしようかなぁ…帰れないじゃん。


でも、アソコに置き去りにさせられてるよりは良いか。


きっとなんとかなるでしょ。














私は政宗に携帯メール見られたら死ねますよ…。

てか叩き斬られます、確実に!政宗になら本望だけど(何)


モドル