* * I’m gonna hold you ’til your hurt is gone. * -   * * - ndex
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「小十郎さん」


「はい」


「政宗っていつもあんな感じ何ですか?」


「そうですねぇ…大体、あんな感じです」







慣れない着物に悪戦苦闘しながら


障子の向こう側に居る小十郎さんと話しをしていると


政宗と居る時にはない穏かな時間に癒された。








― 信用2 ―








「出来ました!」







1人で着物が着れた!!!


って言う達成感を感じながら襖をあけた。


それはもう、誇らしい気持ちで。


だけど、私の姿を見るなり、小十郎さんが申し訳なさそうに苦笑した。







「反対ですよ」


「え?………あッ…」







自分の胸元を指差しながら


何故かすまなさそうに笑われて、顔から火が出そう…。


再び小十郎さんが障子の向うに姿を消して、私は苦労して着た着物を脱いだ。







「小十郎さん」


「はい」


「真剣に聞いてくださいね?」


「はい」


「さっき政宗にも話したんですけどね…」


「…はい」


「私実は400年くらい先から来たんですよ」


「…………」







う……中々返事が返って来ない……。


変な人だと思われたかな…。


でも本当の事だし…。








「・・・殿は、貴女の話を信用すると仰ったのですか?」


「はい」


「ならば私も殿のお考えに従いましょう」


「信じてくれるんですか?」


「えぇ。いまいちパッと来ませんが、貴女が嘘を吐いている様には見えませんから」


「あ、ありがとうございます!!!」







物分りの良い人達で良かったぁ…!!


拙者、涙で前が見えませぬ…!!







「でも…私みたいな怪しい人をそんなに簡単に信用して良いんですか? もし何処かの間者だったりしたら…」


「大丈夫です。その時は容赦なく斬れとの事ですから」


「ひえぇ…!!ぜ、全然大丈夫じゃないですよそれ!」


「はは、冗談ですよ」







ホントかよ…。


小十郎さんって嘘つかなさそうだしなァ…。


まぁ、いいか。疑われるような事しなければいいんだもんね。







「ここって、静かで良い所ですね」


「お気に召されましたか?」


「はいッ。私の居た所には、こんな静かな所ないですもん。」







無事に着物も着終わって、仕事に戻ろうとする小十郎さんを無理矢理引きとめた。


迷惑だとは思いつつも、まだ1人にはなりたくなくて


小十郎さんの優しさに少しだけ甘えてみる事にした。


案の定、嫌な顔一つしないで私と世間話をしてくれている。


こっちについて色々聞いた後、話しは私の居た時代へと移った。







さんが居た国はとても平和だったのですね」


「はい、良い所ですよー!色々と便利だし。


……あ、別にここが悪いとか言うんじゃなくて…」


「解っています」







くす、と笑う小十郎さん。


あぁこの人も凄く美人な人だな、とその横顔を見ながら思う。


政宗といい、小十郎さんといい、ここは美人さんが多いなぁ。







「突然、こんな知らない土地に来てしまって動揺していると思いますが、


私でお役に立てるような事があれば何でも言ってくださいね」


「うぅ……ありがとうございます…」







政宗も美人だけど、小十郎さんはもっと美人だ…。


内面からの輝き(優しさ)が違うもの!!


そんなに優しくされると、涙が出ちゃいそう…。


ほろり、といきそうで、目じりを指先で軽く拭って


首を傾げている小十郎さんの方を向く。








「私、こんな事になってビックリしてるけど、


政宗とか小十郎さんみたいな有名な人に会えて、ちょっと感動してたりもするんです」


「やはり殿は後世に名を残しておられるのですね!」







わ、なんか嬉しそう!


政宗が有名って事だけでこんなに喜ぶなんて…。


忠臣の鏡だわこの人…。







「実際に殿にお会いしてみてどうですか?」


「あぁ―――……」







そんな…困る…。


私にあの政宗を誉めろと言うの?


女の子の背中を蹴り飛ばして起こすような男を?


誉められる所なんて言ったら顔くらいしか思いつかないわよ。







「本当の事を言っても構いませんよ。強引だとか横暴だとか」


「プッ!!それ本心ですよね!?」


「いやぁ〜…あはは…。昔はもっと可愛いらしかったんですけどねぇ」


「可愛い!?あの政宗が!?」


「しっ、静かに!殿に聞かれたら怒られますよ」


「その可愛かった頃の話、聞かせてください」







そっと声のトーンを落として、身体を寄せる。


子供がヒソヒソ話をするような体勢になってお願いすると


小十郎さんは周りを確かめてから、小さな声で色々と教えてくれた。







眼帯の事には触れなかったけれど、


小十郎さんのおかげで私の中でまだまだ未知数だった


伊達政宗って言う人が、ほんの少しだけ理解できたような気がする。







「不器用な人なんですよ」







そう言って苦笑して、小十郎さんが立ちあがる。


ああそういえば、私が引きとめてたんだっけ…。







「長々とごめんなさい」


「いえ、楽しかったですよ」


「ありがとうございます。じゃ、お仕事頑張って下さいね!」


「はい」







障子を開けて小十郎さんを見送って部屋の奥に引っ込むと


耳鳴りがしそうな程静かな空間に包まれた。


ごろんと横になって大きく息を吸い、畳の臭いを身体中に取りこんだ。


何処となく懐かしい臭いに、虚しさがこみ上げてくる。







「音楽とかないと、耐えがたいな…。あ!!!そうだ!!」







部屋の端にまとめて置いてあった荷物の山を急いで漁り、


目的のビニール袋を掴みとる。


中身はゲーセンの戦利品、巨大板チョコ。


総額、500円という安さで手に入れたまさに戦利品。


そのチョコの一角を取って、ハンカチに包む。







「政宗の所に行こう!」







 





長々とお疲れ様でした。。。ただ、こじゅの忠臣っぷりを書きたかったんです。
このトリップでは小十郎は漫画版です。


モドル